映画|アイ・アム・ア・ゴースト|I Am a Ghost

オバケの視点から見たオバケ映画という独創的なホラー映画。おすすめ。アンナ・イシダJeannie BarrogaRick Burkhardt。監督H・P・メンドーザ。2012年。

 

ここはどっかの森の一軒家。

孤独女(アンナ・イシダ)の恬淡とした生活が描かれる。朝起きて、目玉焼きとパンを食い、買い物にいく。

買い物にいくといっても、ドアを開けて出かけたら、次の瞬間には家に戻っている。本人が「買い物にいった」気になっているだけである。

その後は家の中を掃除したり、オルゴールを鳴らしたりする。同じことが何度も繰り返される。買い物メモに毎回「お花」を書くところや、その他隅々まで毎回同じである。

これを見物していると「誰もいない森で木が倒れた音は音といえるのか」の逸話が思い出されてくる。こんな女は生きているといえるのだろうか。

答え → 生きてない。この娘はオバケだから。

あるとき、家のどこからか、知らないオバちゃんの声が聞こえて「エミリーさん。聞こえますか。あなたは死んだのですよ」といわれて、オバケですか、とオバケは驚いた。「わたしは霊媒師のシルヴィアです」といわれて、ますます驚いた。

てわけで、この映画は『I Am A Ghost』という題名通り『オバケの視点から見たオバケ映画』だったのでした。声の主、シルヴィア(Jeannie Barroga)の仕事は、迷えるエミリーオバケの魂を鎮め、あの世に導くことである。エミリーとシルヴィアは互いの姿を見ることはできないが、会話はできる。

霊媒師シルヴィアは、セラピストのような口調で、エミリーオバケに説明をする。「家の中でナイフが飛んだり鏡が割れたりするから、住人たちはこわがっているのですよ」なんていうが、エミリーにしてみれば心外である。「なんですって。わたしはそんなことをしていません。いまだってお掃除をしようと思っていたところなんですよ。ひどいひどい」とかいう。なかなかおもしろい。

じつは、シルヴィアはこれまで何度もエミリーに同じ話をしたんだそうな。その度にエミリーは逃げていってしまい、次に話すときにはぜんぜん覚えていない。だからまた最初から説明をする。忍耐強く何度も同じ話をしているという。

シルヴィアは経験豊富な霊媒師で、同じようなケースを何度もてがけているが、エミリーに対しては困惑気味である。これほどに難航するケースは珍しいそうな。

なぜエミリーに限ってシルヴィアの思い通りにならないのか。彼女は他のオバケとどこが違うのか。それは映画でご覧になってください。意外な結末が用意されていますよ。後半13分のびっくりギョギョギョにウギャー!こわーい。

死んだあともこんな苦労をしているエミリーさんはじつに気の毒ですが、映画を観ている私らにはおもしろい!